2018年を振り返る

 

2018年を振り返る、と言いたいところだったが、なんやかんやで
記事の更新が年を越してしまった。
(下記、文中は2018年時点として記載しています)

2018年もまた、混乱が続いた1年だったが、とりわけ日本では
自然災害で多くの方々が亡くなった。
亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
 
 

世界ではアメリカと中国の覇権争いの激化が目立った一年だった。

トランプが相変わらずの自国第一主義を掲げているが
パプアニューギニアで開催されたAPECでは、通商政策を巡って米中の対立、
また保護主義をめぐっての欧米の対立があり、一時は首脳宣言の提出も危ぶまれた。
さらにその後、アルゼンチンで開催されたG20においても、首脳宣言に
保護主義への積極的対抗姿勢が盛り込まれないなど、アメリカに与した苦渋の
閉幕となった。
ファーウェイの幹部がカナダで逮捕され、そのあとに、カナダ人が中国で
拘束される事件が相次いだ。米中の衝突に悲観した米国の市場は大いに荒れ、
その余波が全世界に波及した。
アメリカではFRBの利上げ・逆イールド現象、中国は不動産バブル、というように
経済面では暴落の懸念が注視される中、
世界の市場は米中通商摩擦がどういう展開になるかで大きく左右されるだろう。

さて、前年と同様中東について触れてみたい。
自分でも消化不良なのは重々承知しているので、そこはご了承のほどを。


ISの収束が見えたかに思われた中東はいまだに混乱が続いている。
収束どころか、アメリカではトップ自らが、現場を知り尽くす軍人の意見を
聞くことなく更迭し(マティス国防総省長官)、いきなりシリアからの撤退を
表明する始末。
さすがに与野党から慎重な意見が相次いだことから、意見を一転、慎重に
進めると発言を訂正するというドタバタになった。
以前のイラク戦争ではないが、"パパ"ブッシュが失敗した同じ轍を踏もうと
していたのである。
こういうあたり、中東のパワーバランス、歴史に不明なトランプを
必死に軌道修正しようとするアメリカ首脳の迷走ぶりが垣間見える。

ところでサウジアラビアに関しては、ムハンマド皇太子主導のもと、
オイルマネーの道を打開すべく、国内の経済改革が進められてきた。
しかしながら、サウジ政府に批判的な報道を続けてきたジャマル・カショギ氏の
殺害が報じられるや、10月の「砂漠のダボス会議」は一転、世界の政界、
財界の要人の欠席が相次いだ。
それでなくとも、イエメンへの軍事支援が国内経済の足を引っ張っている矢先である。
日本とて例外ではなく、サウジとの共同ファンドをかついで投資拡大を
もくろんだソフトバンクが思わぬ余波を受けた。
(本音は、グループの16兆円の有利子負債償還であろうが、7兆円程度の
 資産価値で2018年度が終わったのは、孫氏にとって厳しいスタートアップとなっ 
 た)。

 

OPECは崩壊するのか カタール脱退はOPEC解体の序曲か
年の終わり近く、カタールOPEC脱退を表明するというニュースが駆け巡った。
以前より、OPEC加盟国の結束力低下は表面化していたが、
頼みとする中国・インド市場も先が見えず、昨年まで上昇基調であった原油価格は
再び下降しはじめた。
世界市場に影響を与えてきたOPECは世界最大のカルテルであるが、
とくに1980年代以降、原油の価格統制が自由市場にゆだねられるようになって以来、
影響力の低下が目立ってきていた。
さらに近年、シェールオイルに代表される代替エネルギー革命により、
その傾向はさらに顕著なものになってきている。
こうした中、年末にアメリカのウォールストリート・ジャーナルが流した
ニュースが世界中を巡った。
サウジアラビアシンクタンクが、OPEC解体がオイル市場に与える可能性に
ついて検討しているという報道である。
それを、OPECの盟主たるサウジ国内でやっているというのだから、
意図的なリークに思えなくもない。
いずれにしても、もはや中東の加盟国との同盟よりも、エネルギーのみならず、
安全保障上、大きなプレゼンスを持つアメリカ(そしてロシア)との関係を
重視せざるを得ない事情がある。
OPEC存続の意義を加盟国が見いだすことができなければ、数年のうちに
OPECは解体の道を歩むことになるだろう。

 

こうした世界の意向が渦めく中、次回の総会で、各国がどのような動きをするのか
注目される。

■逆オイルショック ~サウジ逆襲のシナリオ
前述といささか矛盾する題になってしまうのだが。
以上、サウジにネガティブなトピックを挙げてきたが、サウジにも全く
カードがないわけではない。それが逆オイルショックである。
オイルショックについては、下記の記事を参考
OPEC総会目前で30%超の原油下落!逆オイルショックに警戒せよ
アメリカはエネルギー供給大国であり、原油高はむしろ国益に適う。
しかしながら、サウジにプレッシャーをかけているのは、大統領再選を
狙うトランプである。
利上げ、原油高といった問題に、トランプが一定の成果を上げれば、大統領再選への
準備が一歩整うことにもなる。
そこをサウジがトランプの意向に沿う形で増産を進め、原油価格を、
トランプが期待する以上に、むしろ意に反する形で、一気に
(1バレル=30ドル前半?)引き下げるものである。
当然のことながらシェール市場も下がる。
それを利して、アメリカの原油市場への関与を低下させ
サウジが再びイニシアティブを握るというシナリオである。

ただしサウジとしてもリスクは高い。
シェール市場が混乱すると、慌てるのはアメリカだけでない。
サウジのみならず、世界規模(それもリーマンショックをはるかに超える)
の恐慌に発展する可能性がある。
(とくに日本の銀行は、シェール関連のジャンク債を保有している割合が
各国に比べ高いと言われるので、日本経済には深刻な影響が出る
可能性がある。)

サウジとしては自国の経済を犠牲にする上、国内の支持が大きく左右される。
さらにはイランとの対峙を考えれば、そこはやはり
安全保障上アメリカに頼らざるを得ない。
現時点ではサウジには、このシナリオに着手する余裕はないように思われる。

いずれにしても次回以降のOPEC総会、さらにG20を巡る各国の動向は注目である。
次回のG20の議長国は日本。果たしてどんな旗振りをするのであろうか。