2017年を振り返る

この1年は、混乱と迷走と言う言葉に尽きる1年だった。6月には、英国がEU離脱
正式に表明し、世界の政治が大きく変わることになった。
この動きは大陸を飛び越え、ポピュリズムの頂点とでも言うべきアメリカの
トランプ政権が動き出した。
しかしながら、単純にはいかないのが世の常。

フランス大統領選では、極右の急先鋒ルペンを破ってマクロンが当選。
EUの「理性」が、辛くも自国第一主義に「No」を表明したかに見えた。
しかしながらその後、マクロンの統治能力への不満もあって国内世論は反発、
支持率も大きく下がり、混乱が続いている。

そしてEUの”ラスボス”、ドイツにおいても、例外ではなかった。
大方の予想通り、メルケルが首相に再任され、4期目続投は大磐石かに思えた。
が、総選挙で与党CDU/CSU議席は大きく減り、さらに移民問題を巡って
各党との意見が対立。連立交渉も決裂するという未曾有の分断危機を迎えた。
EU随一の安定感を誇ってきたドイツ政権においても綻びが見えはじめた。
イギリスのメイ首相と同じく、メルケル自らが進退を問う形で総選挙を行う
可能性もゼロではあるまい。

中東でこの1年、もっとも注目を浴びたのは、クルド族に関する話題であろう。
この数年、各国で大きな混乱を起こしていた「イスラム国」はようやく弱体化し、
イスラム国」首都ラッカ陥落が目前となっている。
イスラム国」の弱体化に呼応するかのように、クルド族の一部がイラクからの
独立する動きを見せた。
クルド族としては、ようやく自分たちの存在意義を世界に問う時代に来た、
という思いであろう。
ただ、クルド族の独立の原点は「サイクス・ピコ協定」の破棄であり、この思想は
イスラム国」が掲げていたものと同じである。
これを意識してか、中国を除く国連常任理事国はすべてこの動きをけん制する
コメントを一斉に出した。
こうした地政学的リスクもあり、一時期は1バレル50ドル前後を推移していた
原油価格はゆっくりと上昇基調に移り始めている。

この動きにほぼ同じくして、スペインのカタルーニアでも独立の動きが勃発、
民族自決主義の動きは各地に飛び火した。
が、EUおよびその周辺国は一貫して冷静であり、分断に対してはネガティブな
コメントを出している。
民族自決主義は道徳上は当然認められるべきものではあるが、かたや国際秩序の
安定という大義にかかれば、国際的な承認を受けることは、厳しいという現実を
明らかにすることになった。

さて経済面では、ビットコインに対する注目が高まっている。
さかのぼることスミソニアン協定以来、ポストブレトンウッズ体制の行き着く先は
数十年にわたって注目されてきた。
一時期は円だったり、ユーロだったり、という論調が見られたが、日本経済は
停滞し、またユーロは分断の危機を迎えている。人民元が新たに基軸通貨
加わったものの、その動きには中国政府の不透明な統制が疑われ、決定的な
信用を得るに至っていない。
そうした事情や、あるいは現金そのものに対する信用が低い国においては、
仮想通貨はまさに究極の価値交換手段であった。
投機的なマネーも集中し、仮想通貨へのマネーの集中は際立っている。
ただ、ビットコイン中央銀行による統制が不可能であり、既存の基軸通貨
不安定要素になる一面もある。
おそらく基軸通貨を有する中央銀行は今後、ブロックチェーン技術を用いた
独自の仮想通貨の制度設計へと向かう可能性が高いと思われる。

極東では、北朝鮮が今までにない挑発を続けている。
アメリカ政府や日本政府としては、北朝鮮の核保有は一切認めない方針で
一致しているが、現実問題として、今の金正恩体制の崩壊を考えれば、
周辺国への影響は計り知れない。
そうなると、条件付き核保有も認めざるを得ないところに落ち着くのでは
ないかとも思われる。

もっとも日本としては、政治は進歩的なトピックはほとんどあらず、
わずかに小池旋風が注目を浴びた程度である。
その政策内容もほとんどスカスカの状態で世間の評判を一気に落として
しまったのも、かつての大阪の橋下知事が拙速に過ぎ国政進出に失敗した
二番煎じのように、デジャブを覚えてしまうのは私だけではあるまい。